痛み・腰痛

当院では、39年の治療経験と実績から、痛みは改善されると考えていますので、「痛みの原因にもよりますが、ほとんどの痛みは改善され、治ると思います。」と答えています。
科学的又は西洋医学的にも、痛みの治療又は痛みを扱うことは難しいといわれています。

痛みとは

痛みは独立した一つの感覚ですが、他の感覚と著しく異なる点は痛みを引き起こす刺激の種類が特定のものでないことであり、いかなる種類の刺激もこれが非常に強くなって生体に有害に働くときには痛みとして感じられる。したがって、古くは痛みには独立した受容器を考えない時代もあったとされています。
しかし、現在では独立した神経系や受容器が考えられ、痛みの受容器は体表のいたるところにあり、体内にも広く分布しているとされています。かゆみも痛みの一異形であるとされています。
国際疼痛学会は、痛みは「実質的または潜在的な組織損傷に関連した不快な感覚および情動体験」であると定義しているように、痛みには、感覚の側面と情動の側面があるといわれます。
感覚の側面は、視覚、聴覚の場合、外界に感覚の対象があって、他者と感覚対象の共有ができ、お互いの合意が形成されやすいとされます。

しかし、痛いという痛みの場合の感覚対象は痛みを感じている人の体表又は体内にあり、他者とその痛みの体験を共有することは原理的に困難であるといえます。
他者の痛みの感覚について、できることは他者の痛みを想像して、共感しようと努めることだけであるとされています。

痛みは一般的に急性痛と慢性痛に区分されています。急性痛、急性腰痛、ぎっくり腰で来院されることがありますが、この場合は1回~5回の治療で改善・治癒することが多いようです。
このような急性痛の場合は痛みが改善され、他に重大な病気がないということであれば、それで問題は解決したものと考えています。
慢性痛は徐々に痛みだし又は急性痛から移行して長期間継続する痛みであり、多くの場合、眠れない、イライラする、食欲が無い、便秘がある、自信が無い、うつ傾向になるなどの特有の心理学的特徴を示すことが多いといわれています。
以上の特徴が慢性痛の結果なのか、それとも慢性痛を生じやすい素因によるのかはわかっていないとされています。

痛みの治療

痛みの鍼灸治療は、一定の方法によって、鍼灸の技術を身体に施すことです。

鍼灸治療は疾患別に対応する医療ではなく、基本的には生体の調節機能全般に作用して、生体の恒常性を賦活させて、病気や症状を改善するという特徴を持っていろといえます。

近年、米国などにおいても鍼灸治療への要望が高まり、伝統医学・医療である鍼灸が、代替医療という観点から西洋医学との統合医療へと変身し創造されつつあり、その統合医療という観点が社会の要請であるといわれています。
つまり、西洋医学の成果を踏まえて、従来から存在した伝統医学・医療を医学、医療に加えた新しい統合医療へと再編成が行われつつあるということのようです。
日本でも幅広い領域で鍼灸治療が行われており、大学の医学部の医学教育に東洋医学や鍼灸治療を取り入れる大学が増加しているといわれています。

腰痛の鍼灸治療

鍼灸治療は東洋医学の診断治療体系に基づく医療であるために、西洋医学で規定される疾患名のみによって、鍼灸治療の適応、不適応を正確に判断することは難しい場合があるといえます。
つまり鍼灸の施術によって、病気の治療、予防、再発防止を行うには、西洋医学と東洋医学の二つの学問体系が必要であり、鍼灸師の内面には、近代医学と伝統の鍼灸医学の二つの体系が併存しており、鍼灸治療の適応、不適応を判断し、鍼灸治療に必要な簡明な近代医学の知識と伝統の鍼灸の技術の二つの体系について理解し、鍼灸の施術をする必要があるということだろうと思われます。

鍼灸治療の安全性・有効性の立証

鍼の鎮痛機序解明の研究によって、鍼をすることによって、体性神経系、自律神経系、内分泌系に影響を与え、中枢神経系から鎮痛作用、身体の自己調節作用、免疫作用などに効果のある化学物質が放出されることが解明され、鍼灸治療の全身的な臨床効果の科学的な根拠が次第に明らになってきているようです。
そして、実際に腰痛などの疾患に鍼灸治療を行うと治療後に痛みが改善し、治癒することも事実です。

最後に、鍼灸治療は、ある種類の痛みの改善・治癒に効果があり、生活の質(QOL)の維持、向上に役立ち、病気の予防に効果があるので、鍼灸の方法及び技術の安全性と有効性並びに経済性が立証されることを強く希望して終わります。

腰痛は、鍼(はり)灸治療も大切ですが、予防が第一です。

腰痛になりやすい人は、運動不足の人が多いように思います。しかし、運動をするには、やろうという気持ちと時間などが必要ですので、僕もそうですが、「よし、健康、腰痛の予防のために、 運動をしよう」と思い、始めてみても、寒かったり、眠かったり、 時間がなったりで、なかなか長続きしないことがあります。そんとき、どうしたらよいかが、問題です。
そういう場合、僕は、仕方がないから、予防には運動が第一だとしても、第二のこと、第三のことをやるようにしています。僕の第二の予防法は、駅を利用するときや高いビルを利用するときに、エレベターやエスカレーターを利用しないで、階段をしっかり利用して歩くようにすることです。たった、これだけのことですが、腰痛の予防には充分であるように思います。
第三の予防法は、それに加えて、一日、1回の手足、首、腰などの関節の曲げ伸ばしと回旋、腹筋運動と背筋運動各10回、 腕立て伏せ運動10回を忘れずに、毎日、行っています。そして、ときに、腰の具合が少し悪いなと思うときの予防法は、有名な足の「三里」(膝の下、外側、押すと気持ちのいいところ)のツボを 4~5回押しています。
これだけのことですが、これまで、腰痛の予防は十分できていると思っています。

【参考文献】
横田敏勝『臨床医のための痛みのメカニズム』(南江堂・1990)
高木誠 箕輪良行 生坂政臣編『外来全科痛み治療マニュアル〔第2版〕』(三輪書店・2004)
森本昌宏編『ペインクリニックと東洋医学』(真興交易(株)医書出版部・2004)